2009年 04月 05日
次は誰だ? |
WHO'S NEXT? という記事(オンラインアクセスは会員のみ)が、おなじみC&EN3月16日号に。
医薬品業界のレイオフ経験者が、これからの心得について現在業界にいる人たちに語るというもので、5ページに渡る記事は、いくつかのファクトの紹介で始まる。C&ENの統計によれば、過去3年間、医薬品業界では、USを中心に13万人がレイオフされた。2007年にはファイザー、バイエル、J&J、GSK、BMS、そしてアストラゼネカが約38,000人のレイオフを発表。昨年はメルク、BMS、GSK、シェーリング-プラウ、Wyeth(カタカナで書くとワイエス?ワイズ?)がトータル約25,000人をカット。
今年はファイザーのWyeth買収関連だけで26,000人がターゲットになりそうで、さらにGSKとアストラゼネカが12,000のカットを発表、メルクのS-P買収で16,000人が今後数年間に減らされる模様。ジョブカットは業界のほぼ全域が対象だが、特に激しく影響を受けているのはセールスとR&D。レイオフ人数の推移についてのグラフをちょっとお借りするとこんな感じ。
2000年のバブル崩壊後、2006年にはかなり景気回復したかに見えたのが、景気後退が始まったと言われる2007年からがツンときているのがよくわかる。しかも赤いバーの2009年はたった2ヶ月のデータ!これは多分大手だけの数字で、中小の製薬やスタートアップも状況は同じかむしろもっと厳しいはず。
ちょっと記事から脱線すると、一方ビッグファーマのCEOのサラリーはだいたい16Mから18M。16億円です。まあ今でもビリオン単位の利益を出し、金融や自動車業界と違って政府からの救済とかも受けてないけど、うーん。
さらに脱線するけど、サンディエゴ近郊のラホヤにあるTorryPines Therapeuticsという会社はNASDAQ上場しているのだが、最近社員を何と3名に減らした。CEO、CFO、それにVPひとりで、これから会社の整理(できれば売却)を検討するという。臨床パイプラインをいくつか持っていて、アルツハイマー領域ではエーザイとも提携しているとか。先週の株価の終値は18セントで、株式時価総額は2.9ミリオン。3億円です。上記のような大手のCEOならキャッシュでぽんと買えちゃう(笑)。ところがこの会社、キャッシュ残高が10ミリオンくらいある(負債は3.5M)。理屈の上では、全株式を3億円で買い取れば6.5億円のキャッシュと会社の設備(何があるかわからないが)と臨床開発品数点(どれだけの価値かはわからないが)がついてくるという状態。
ここだけでなく、このところ株価がセント単位になっている会社はたくさんあって、それらはみんなかなり危機的な状況のはず。まして株式未公開のスタートアップとなると、情報も非公開となるけれど、ベターな状況であるはずもない。現在会社が前に進んでいて、自分にも仕事があるというだけでも奇跡的とさえ思えてくる。
C&ENの記事に戻ると、あるヘッドハンターの調査によれば、ミドルマネージャーからエグゼクティブクラスで、次の仕事が見つかるまでの中央値が2008年Q2(第2四半期)で3.6ヶ月だったのが、Q3では4.4ヶ月に延びていると。これは次の仕事が見つかった人たちの中央値なので、見つかっていない人は含まれていないはず。そしてテクニカルプロフェッショナルはさらにきついシチュエーションになっていると。ある調査会社によれば、トップ15-20%は複数の会社から複数のオファーを得て、中間の50%は何か見つかるけれど、1年くらいは見ておく必要がある。それ以外(の30-35%)はこれまでとは別のキャリアパスを考える必要があると。要するにこの業界にはもうそれだけのパイはないということ。
記事では12名のレイオフ経験者にインタビューし、様々なコメントを得ているが、比較的円満なところもある一方、元の会社への不信感と嫌悪感が止まらない人も。興味深いのは、社内では自分の会社に関する正しい情報が得られず(つまりきちんとコミュニケートされず)、むしろウェブ経由の方がより正確な情報が得られたりするらしいこと。そういった情報が豊富に得られるサイトとして、Derek Loweのブログ、"In the Pipeline"と、業界情報サイト"Cafepharma"のメッセージボード(掲示板)が紹介されていた。初めて知ったけれど、確かに興味深いトピックが並んでいる。Cafepharmaでは、先月のメルクによるS-P買収発表の2日前に、メルクのボードにこんな書き込みがあったそうだ。
間違いなく本社で何か起こってる。非常に慌しい。かわいそうにS-Pらしい。
一方S-Pのボードには
メルクが来てる。会社の値づけに違いない。会社を買収するしかないなんて残念だ。
みたいな感じだろうか。他にもいろいろ書いてあるのだけど、ネガティブなことばかり書くのは疲れるのでこのくらいにしておく。最後は次のように結ばれている。
今しておくべきことは、すでに差し迫った危機にあると思って、あなたのコミュニティの中で活発にネットワークを広げておくことだ。国籍などに関係なく、結局これにつきるということのようですね。
医薬品業界のレイオフ経験者が、これからの心得について現在業界にいる人たちに語るというもので、5ページに渡る記事は、いくつかのファクトの紹介で始まる。C&ENの統計によれば、過去3年間、医薬品業界では、USを中心に13万人がレイオフされた。2007年にはファイザー、バイエル、J&J、GSK、BMS、そしてアストラゼネカが約38,000人のレイオフを発表。昨年はメルク、BMS、GSK、シェーリング-プラウ、Wyeth(カタカナで書くとワイエス?ワイズ?)がトータル約25,000人をカット。
今年はファイザーのWyeth買収関連だけで26,000人がターゲットになりそうで、さらにGSKとアストラゼネカが12,000のカットを発表、メルクのS-P買収で16,000人が今後数年間に減らされる模様。ジョブカットは業界のほぼ全域が対象だが、特に激しく影響を受けているのはセールスとR&D。レイオフ人数の推移についてのグラフをちょっとお借りするとこんな感じ。
2000年のバブル崩壊後、2006年にはかなり景気回復したかに見えたのが、景気後退が始まったと言われる2007年からがツンときているのがよくわかる。しかも赤いバーの2009年はたった2ヶ月のデータ!これは多分大手だけの数字で、中小の製薬やスタートアップも状況は同じかむしろもっと厳しいはず。
ちょっと記事から脱線すると、一方ビッグファーマのCEOのサラリーはだいたい16Mから18M。16億円です。まあ今でもビリオン単位の利益を出し、金融や自動車業界と違って政府からの救済とかも受けてないけど、うーん。
さらに脱線するけど、サンディエゴ近郊のラホヤにあるTorryPines Therapeuticsという会社はNASDAQ上場しているのだが、最近社員を何と3名に減らした。CEO、CFO、それにVPひとりで、これから会社の整理(できれば売却)を検討するという。臨床パイプラインをいくつか持っていて、アルツハイマー領域ではエーザイとも提携しているとか。先週の株価の終値は18セントで、株式時価総額は2.9ミリオン。3億円です。上記のような大手のCEOならキャッシュでぽんと買えちゃう(笑)。ところがこの会社、キャッシュ残高が10ミリオンくらいある(負債は3.5M)。理屈の上では、全株式を3億円で買い取れば6.5億円のキャッシュと会社の設備(何があるかわからないが)と臨床開発品数点(どれだけの価値かはわからないが)がついてくるという状態。
ここだけでなく、このところ株価がセント単位になっている会社はたくさんあって、それらはみんなかなり危機的な状況のはず。まして株式未公開のスタートアップとなると、情報も非公開となるけれど、ベターな状況であるはずもない。現在会社が前に進んでいて、自分にも仕事があるというだけでも奇跡的とさえ思えてくる。
C&ENの記事に戻ると、あるヘッドハンターの調査によれば、ミドルマネージャーからエグゼクティブクラスで、次の仕事が見つかるまでの中央値が2008年Q2(第2四半期)で3.6ヶ月だったのが、Q3では4.4ヶ月に延びていると。これは次の仕事が見つかった人たちの中央値なので、見つかっていない人は含まれていないはず。そしてテクニカルプロフェッショナルはさらにきついシチュエーションになっていると。ある調査会社によれば、トップ15-20%は複数の会社から複数のオファーを得て、中間の50%は何か見つかるけれど、1年くらいは見ておく必要がある。それ以外(の30-35%)はこれまでとは別のキャリアパスを考える必要があると。要するにこの業界にはもうそれだけのパイはないということ。
記事では12名のレイオフ経験者にインタビューし、様々なコメントを得ているが、比較的円満なところもある一方、元の会社への不信感と嫌悪感が止まらない人も。興味深いのは、社内では自分の会社に関する正しい情報が得られず(つまりきちんとコミュニケートされず)、むしろウェブ経由の方がより正確な情報が得られたりするらしいこと。そういった情報が豊富に得られるサイトとして、Derek Loweのブログ、"In the Pipeline"と、業界情報サイト"Cafepharma"のメッセージボード(掲示板)が紹介されていた。初めて知ったけれど、確かに興味深いトピックが並んでいる。Cafepharmaでは、先月のメルクによるS-P買収発表の2日前に、メルクのボードにこんな書き込みがあったそうだ。
"Definitely something is up at HQ. Lots of scurrying around and buzz. Sorry to hear it may be Schering-Plough".
間違いなく本社で何か起こってる。非常に慌しい。かわいそうにS-Pらしい。
一方S-Pのボードには
"Merck person here. Definitely something up on our side so it must be true that we are bidding. Very disappointed that we can't do better than buying you."
メルクが来てる。会社の値づけに違いない。会社を買収するしかないなんて残念だ。
みたいな感じだろうか。他にもいろいろ書いてあるのだけど、ネガティブなことばかり書くのは疲れるのでこのくらいにしておく。最後は次のように結ばれている。
"In this environment, the best you can do is to be active in your chemistry community and maintain your network as if you are in imminent peril of being the next on the chopping block."
今しておくべきことは、すでに差し迫った危機にあると思って、あなたのコミュニティの中で活発にネットワークを広げておくことだ。国籍などに関係なく、結局これにつきるということのようですね。
by a-pot
| 2009-04-05 06:52
| 医薬、バイオ関連