2009年 04月 24日
新薬開発はするべきなのか? |
もしかしたら以前にも書いたかも知れないと思いつつ、自分で検索しても見つけられないので、書いてないかも知れない。書いてなくても書いたかも知れないと思うほど、しばらく前から折に触れ考え続けていることがある。
いつかじっくりと研究してみたいと思っていることで、これは環境科学という範疇に含まれるのか、それとも産業界分析というか、あるいは研究というよりは単なる調査といった方がいいかも知れない。
それは、ひとつの新薬を作るのに、本当のところいったいどれだけのモノやエネルギーが費やされ、どれだけの廃棄物や二酸化炭素が出て、どれだけ環境を汚しているかというようなこと。新薬を開発するということは、トータルで考えた場合、本当に意味があるのか、あるいは意味がある薬とない薬があるのか、もしくは新薬をひとつ開発すると同時に新しい病気もひとつ作り出しているようなことはないかといったようなこと。
新薬の開発というのは、よくギャンブルに例えられるけれど、本当にスロットマシンでジャックポットを引き当てるようなもの。つまりほとんどの日々の仕事はネガティブな結果であるにも関わらず、それらに費やされる資源やエネルギー、出される廃棄物というのは膨大な量になる。
いわゆる低分子医薬の場合、ざっくり言うと、だいたい1万個の化合物を作るとその中のひとつが新しい薬になると考えられている。多分(笑)。つまり9999個の化合物は結果的に薬にならないにも関わらず合成され、試験されるわけ。ひとつの化合物を作るのに、平均5工程かかるとして、反応に使う有機溶媒が5工程でそれぞれ500, 400, 300, 200, 100 mL必要だとして、有機溶媒による抽出が4回 (200 mL x 4)、カラム精製が3回 (1.5 L x 3)必要だとして、まあざっと6-7リットルの有機溶媒を使うと考えられる。少なめに5リットルとしても、1万個作るには5万リットル使うことになる。実際にはかなりの数の化合物をスケールアップして再合成することになるので、これまたざっくり2倍とすると10万リットル。1000リットルで1トンとすると、100トンということになる。
その後は、そうやって選ばれたひとつの開発候補化合物をキロ単位で製造しなければならない。そこではまたトン単位で有機溶媒が消費されることになる。使用後の有機溶媒はだいたい焼却処理されることになるが、例えば酢酸エチルを燃やすと、酢酸エチルは炭素が4つあるので、4分子のCO2を出す。酢酸エチルの分子量は88でCO2は44.つまり1トンの酢酸エチルを燃やすと理論上は4 x 44/88 ということで 2トンのCO2が出ることになる。
実際に使われるのは有機溶媒だけではなくて、各種の試薬があり、重金属、遷移金属なども多く使われる。ろ紙なんかはかわいい方だが、使い捨てにされるピペットや試験管やLC/MSなどのバイアル類、生物系の試験のためのプレートやDMSO、チップやチューブなど、本当に膨大な産業廃棄物を出している。さらにマウスとかラットとか、イヌとかサルとかも考えると、モノだけの話ではない。
そしてひとつの新薬を作るのに必要なモノやエネルギーを算出する際に重要なことは、すべてのうまくいかなかったプロジェクトも含めて平均しなければならないということ。他業界の人にはイメージしにくいかも知れないけれど、新薬開発のための研究というのは、その大半が失敗に終わる恐怖のfailure dominant businessで、だからこそギャンブルに例えられるのである。
こういったデータをある程度きちんと試算して、実際のところはいったいどうなっているのかを知りたいなーと思うわけです。
いつかじっくりと研究してみたいと思っていることで、これは環境科学という範疇に含まれるのか、それとも産業界分析というか、あるいは研究というよりは単なる調査といった方がいいかも知れない。
それは、ひとつの新薬を作るのに、本当のところいったいどれだけのモノやエネルギーが費やされ、どれだけの廃棄物や二酸化炭素が出て、どれだけ環境を汚しているかというようなこと。新薬を開発するということは、トータルで考えた場合、本当に意味があるのか、あるいは意味がある薬とない薬があるのか、もしくは新薬をひとつ開発すると同時に新しい病気もひとつ作り出しているようなことはないかといったようなこと。
新薬の開発というのは、よくギャンブルに例えられるけれど、本当にスロットマシンでジャックポットを引き当てるようなもの。つまりほとんどの日々の仕事はネガティブな結果であるにも関わらず、それらに費やされる資源やエネルギー、出される廃棄物というのは膨大な量になる。
いわゆる低分子医薬の場合、ざっくり言うと、だいたい1万個の化合物を作るとその中のひとつが新しい薬になると考えられている。多分(笑)。つまり9999個の化合物は結果的に薬にならないにも関わらず合成され、試験されるわけ。ひとつの化合物を作るのに、平均5工程かかるとして、反応に使う有機溶媒が5工程でそれぞれ500, 400, 300, 200, 100 mL必要だとして、有機溶媒による抽出が4回 (200 mL x 4)、カラム精製が3回 (1.5 L x 3)必要だとして、まあざっと6-7リットルの有機溶媒を使うと考えられる。少なめに5リットルとしても、1万個作るには5万リットル使うことになる。実際にはかなりの数の化合物をスケールアップして再合成することになるので、これまたざっくり2倍とすると10万リットル。1000リットルで1トンとすると、100トンということになる。
その後は、そうやって選ばれたひとつの開発候補化合物をキロ単位で製造しなければならない。そこではまたトン単位で有機溶媒が消費されることになる。使用後の有機溶媒はだいたい焼却処理されることになるが、例えば酢酸エチルを燃やすと、酢酸エチルは炭素が4つあるので、4分子のCO2を出す。酢酸エチルの分子量は88でCO2は44.つまり1トンの酢酸エチルを燃やすと理論上は4 x 44/88 ということで 2トンのCO2が出ることになる。
実際に使われるのは有機溶媒だけではなくて、各種の試薬があり、重金属、遷移金属なども多く使われる。ろ紙なんかはかわいい方だが、使い捨てにされるピペットや試験管やLC/MSなどのバイアル類、生物系の試験のためのプレートやDMSO、チップやチューブなど、本当に膨大な産業廃棄物を出している。さらにマウスとかラットとか、イヌとかサルとかも考えると、モノだけの話ではない。
そしてひとつの新薬を作るのに必要なモノやエネルギーを算出する際に重要なことは、すべてのうまくいかなかったプロジェクトも含めて平均しなければならないということ。他業界の人にはイメージしにくいかも知れないけれど、新薬開発のための研究というのは、その大半が失敗に終わる恐怖のfailure dominant businessで、だからこそギャンブルに例えられるのである。
こういったデータをある程度きちんと試算して、実際のところはいったいどうなっているのかを知りたいなーと思うわけです。
by a-pot
| 2009-04-24 15:17
| 医薬、バイオ関連