2005年 01月 08日
Vioxxをめぐる話題 |
アメリカ化学会の会員に送られる会誌、Chemical & Engineering News (C&EN) 1月3日号の読者レター欄に、President, Merck Research Labs (MRL) であるPeter S. Kimからの手紙が載っています。昨年発売中止した関節炎およびリューマチの薬、Vioxxに関する内容ですが、前年ながらweb版では読めません。
事の発端は、この雑誌の昨年12月6日号の、編集長による巻頭言。この中で編集長は、
Merckの、薬が引き起こす危険性の明確な証拠があるにも関わらず、儲かる薬を守ろうとするかたくなな姿勢は、広報の大失敗であり、今後何年にも渡って(医薬)産業界全体に泥を塗ることになるだろう。といった感じのことを書いています。
こういったスタンスの記事は新聞等でもずいぶん書かれたようですが、上記に対してMRLのPresidentが記録を正確にしたいと反論しているのが冒頭の手紙。要約すると、
「Vioxxの安全性に関しては、1999年と2001年に、FDAの諮問委員会により公に検討されている。委員会は、安全性に関する明確な問題はないと結論付け、ラベルへの注意書きさえさせなかった。これらのpublic reviewの後、Merckは心血管系のデータを提供し続け、論文でも発表した。我々の評価は、アスピリンを除くこれまでのどんなNSAIDSやCOX-2阻害剤よりも大きなデータベースに基づいている。これらの期間を通じて、MerckはVioxxに関する研究とモニターを継続し、結果がavailableになり次第速やかに開示してきた。編集長および読者のみなさんには、ぜひそれらの膨大な情報と、我々が用いたscientific processesを、我々のウェブサイト(www.merck.com)でreviewしていただきたい。
Merckは3年間に渡るAPPROVe study(下記参照)に対応して、Vioxxを市場から回収した。ここでのデータはそれ以前のものとは異なった。Vioxxによる心血管リスクは、服用18ヵ月後から上昇し始め、30ヶ月前後でようやく統計的に有意となった。患者さんの利益を総合的に判断して、MerckはVioxxを自主回収した。そもそもこのような議論が可能なのは、Merckが継続的に検討とモニターを続けてきたからこそである」
この他にも書かれていますが、反論部分はざっとこんな感じ。ただし上記のAPPROVe study というのは、Vioxxの安全性を評価するために行われていたわけではなく、この薬が大腸がんの予防に効くかも知れないので、それを確認するための治験です。
事の真偽は部外者にはわかりませんが、私個人としては、Merckの決断時期はリーズナブルであり、2500億円もの売り上げを誇っていた薬を自ら発売中止したその判断は、なかなかできることではないと思っています。いずれにせよ、当事者であり、Merckというビッグな会社のExecutiveみずからが、こういった手紙を投稿すること、そして雑誌の方もそれを速やかに掲載するあたり、アメリカってやっぱり議論先進国だなあと思ってしまいます。
なお、和訳(意訳)の正確さに関しては、責任をもちかねますのであしからず。
事の発端は、この雑誌の昨年12月6日号の、編集長による巻頭言。この中で編集長は、
Merck's callous approach to defending its profitable drug in the face of clear evidence of the dangers the drug posed is a public relations disaster that will tarnish the entire industry's reputation for years to come.
Merckの、薬が引き起こす危険性の明確な証拠があるにも関わらず、儲かる薬を守ろうとするかたくなな姿勢は、広報の大失敗であり、今後何年にも渡って(医薬)産業界全体に泥を塗ることになるだろう。といった感じのことを書いています。
こういったスタンスの記事は新聞等でもずいぶん書かれたようですが、上記に対してMRLのPresidentが記録を正確にしたいと反論しているのが冒頭の手紙。要約すると、
「Vioxxの安全性に関しては、1999年と2001年に、FDAの諮問委員会により公に検討されている。委員会は、安全性に関する明確な問題はないと結論付け、ラベルへの注意書きさえさせなかった。これらのpublic reviewの後、Merckは心血管系のデータを提供し続け、論文でも発表した。我々の評価は、アスピリンを除くこれまでのどんなNSAIDSやCOX-2阻害剤よりも大きなデータベースに基づいている。これらの期間を通じて、MerckはVioxxに関する研究とモニターを継続し、結果がavailableになり次第速やかに開示してきた。編集長および読者のみなさんには、ぜひそれらの膨大な情報と、我々が用いたscientific processesを、我々のウェブサイト(www.merck.com)でreviewしていただきたい。
Merckは3年間に渡るAPPROVe study(下記参照)に対応して、Vioxxを市場から回収した。ここでのデータはそれ以前のものとは異なった。Vioxxによる心血管リスクは、服用18ヵ月後から上昇し始め、30ヶ月前後でようやく統計的に有意となった。患者さんの利益を総合的に判断して、MerckはVioxxを自主回収した。そもそもこのような議論が可能なのは、Merckが継続的に検討とモニターを続けてきたからこそである」
この他にも書かれていますが、反論部分はざっとこんな感じ。ただし上記のAPPROVe study というのは、Vioxxの安全性を評価するために行われていたわけではなく、この薬が大腸がんの予防に効くかも知れないので、それを確認するための治験です。
事の真偽は部外者にはわかりませんが、私個人としては、Merckの決断時期はリーズナブルであり、2500億円もの売り上げを誇っていた薬を自ら発売中止したその判断は、なかなかできることではないと思っています。いずれにせよ、当事者であり、Merckというビッグな会社のExecutiveみずからが、こういった手紙を投稿すること、そして雑誌の方もそれを速やかに掲載するあたり、アメリカってやっぱり議論先進国だなあと思ってしまいます。
なお、和訳(意訳)の正確さに関しては、責任をもちかねますのであしからず。
by a-pot
| 2005-01-08 13:40
| 医薬、バイオ関連