2010年 10月 16日
AFP464 Phase 1 |
久しぶりにTigris Pharmaceuticalsのウェブページを見に行ったら、今年の6月に開かれたASCOで発表された、アミノフラボン誘導体AFP464のフェーズ1の結果についてのポスターが載っているのを発見。アミノフラボンというのは、私が日本にいたときにせっせと作っていた化合物で、その後紆余曲折を経てフロリダのTigrisというスタートアップにライセンスされた化合物です。今回の発表はヨーロッパで行われた臨床試験のもので、USでは現在も二つのP1が進行中です。ざっくりと要約すると以下のとおりですが、いつものごとく私訳であり、正確さには責任を持てませんのであしからず。
というわけで、多くの化学療法同様、厳しい副作用も発現してはいるものの、薬効の兆しもみとめられているようです。Stable diseaseというのが薬効といえるのかどうかというのは議論があるところですが、放っておけば基本的に増殖し続けるのが癌ですから、作用機序にもよりますがフェーズ1の段階でそれを抑えているというのは薬効の兆しくらいには言っていいと私は思います。
化学療法の是非そのものについてもいろいろ議論があるところですが、特に新しい作用機序のもの(本剤もそうです)は、やはり臨床までいってみないとわからないというのが一点。もし予想よりいいものだったら・・・という期待は常にあるわけです。特に本剤は、よい治療薬がほとんどない腎臓癌への効果が期待されているということもあります。また臨床の積み重ねによってメリットとデメリットがわかった上であれば、薬として認可されたとしても、それを使うか使わないかという選択も常にあります。
したがって医療従事者側が十分な情報を患者に与え、決定は患者自身がするという本来の形であればば、選択肢は多い方がいいと言っていいでしょうし、たとえ少数であっても、場合によってはその薬や他剤とのコンビネーションによって完治に近いところまでいくケースがあるとすれば、やはりその選択肢をあえて捨てる必要はないのでは?と思います。
対象となる癌種は乳癌、卵巣癌、腎癌などの各種固形癌。患者さんはみな以前にスタンダードな治療を受けられていて、それらに反応しなくなった、あるいは再発した方々。AFP464は3時間の持続静注で投与され、21日間を1サイクルとして1日目と8日目に行う。つまりDay 1に投与後、1週間後のDay 8に再度投与し、その後Day 21まで何もしない。2サイクル目に入る場合はDay 22を新たなDay 1とするということ。
合計30名のheavily pretreated patients(過去に1回から14回(!)、中間値6回の化学療法適用済み)、平均年齢59歳、が登録された。最初はひとつの投与量につきひとりずつ投与し、徐々に投与量を上げ、グレード2の副作用が認められた投与量からは、3-6名の患者さんに、MTD(最大耐用量)では10名に投与された。
投与量および薬剤との因果関係に関わらず認められた副作用としては、悪心(50%)、嘔吐(47%)、脱力感(43%)など。ただしこれらは投与をやめることで回復。最終的に投与量を制限する主な毒性(Dose Limiting Toxicity,DLT)は肺毒性だった。肺毒性もステロイド投与でほとんど回復。多くの抗癌剤のDLTである骨髄毒性は軽度だった。
薬剤の血漿中濃度は容量依存的に増加し、MTD投与時の最高血漿中濃度(Cmax)は、インビトロでの癌細胞の増殖抑制濃度をはるかに上回るものだった。例えばMCF-7という乳癌細胞株の90%増殖抑制濃度(IC90)の30倍程度も。
最高6サイクル(範囲2-6、中間値4)の投与で、40%の患者さんにstable disease(癌が大きくならないこと)が認められた。すべての患者さんがすでに標準化学療法に反応しなかったり再発であったりすることを考慮すると、この結果はencouragingであり、フェーズ2に進めるメリットがある。
本剤のプライマリーなターゲットであるAhR(Aromatic hydrocarbon Receptor)が細胞質に存在(局在化)している癌細胞が特に本剤に感受性である(逆にこのレセプターが核内にある癌細胞にはあまり効かない)ことがわかっているので、今回の患者さんからのバイオプシーによるAhRの局在化の分析が進行中である。将来はこれにより、より効果が期待される患者さんの選別も可能となるかも知れない。
というわけで、多くの化学療法同様、厳しい副作用も発現してはいるものの、薬効の兆しもみとめられているようです。Stable diseaseというのが薬効といえるのかどうかというのは議論があるところですが、放っておけば基本的に増殖し続けるのが癌ですから、作用機序にもよりますがフェーズ1の段階でそれを抑えているというのは薬効の兆しくらいには言っていいと私は思います。
化学療法の是非そのものについてもいろいろ議論があるところですが、特に新しい作用機序のもの(本剤もそうです)は、やはり臨床までいってみないとわからないというのが一点。もし予想よりいいものだったら・・・という期待は常にあるわけです。特に本剤は、よい治療薬がほとんどない腎臓癌への効果が期待されているということもあります。また臨床の積み重ねによってメリットとデメリットがわかった上であれば、薬として認可されたとしても、それを使うか使わないかという選択も常にあります。
したがって医療従事者側が十分な情報を患者に与え、決定は患者自身がするという本来の形であればば、選択肢は多い方がいいと言っていいでしょうし、たとえ少数であっても、場合によってはその薬や他剤とのコンビネーションによって完治に近いところまでいくケースがあるとすれば、やはりその選択肢をあえて捨てる必要はないのでは?と思います。
by a-pot
| 2010-10-16 12:23
| 医薬、バイオ関連