2011年 11月 23日
アルコールを飛ばすのはそれほど簡単ではない |
料理の際、日本酒やみりんを加えアルコールを飛ばすという作業はごく一般的に行われる。フレンチでもステーキなんかにブランデーを加えてアルコールを燃やすフランベとかっていうのがある。でもアルコールってそう簡単に飛ぶのだろうかとずっとギモンに思っている。
まあフランベのように燃やしちゃえばそれなりになくなるような気はするけれど、鍋で水分といっしょに煮る場合、完全になくすのは難しいだろうというのは、有機合成をやってる人なら誰でも思うことではないだろうか。
ざっくりと検索してみると、一般には、アルコール(=エタノール)の沸点(約78度)は水の(100度)より低いから、加熱すればアルコールが先に蒸発するという記述が多数派。でも中には完全には除けませんと書いてあるページもある。
実際にどれくらい煮込むとどれくらい飛ぶのかの実測数値データを探したんだけど、見つけられず。でも有機溶媒を日常的に使う合成化学者は、水とエタノールの混合物からエタノールだけを完全に留去することがそんなに簡単ではないことをよく知っている。もちろん水を飛ばすほうがより大変ではあるのだけれど。
それはさておき、これがなぜそんなに簡単ではないかというと、水とエタノールというのは任意の割合で混ざる上に、混ざった液体同士がいっしょに蒸発するからだ。たとえばみりんや日本酒の場合、水とエタノールがだいたい85:15程度。重さでも体積でもそんなに大きくは違わないので、とりあえず85 mLの水と15 mLのエタノールが混ざっているとする。これを加熱したときに、最初に蒸発する15 mLが100%エタノールで、残りは完全に水なのなら話は簡単なのだが、実際はそうはいかない。こちらのサイトからお借りしたエタノール/水 蒸気液平衡曲線(下記グラフ左)で、x軸が0.15あたりのときy軸は0.5くらいになってるのがわかるだろうか?
つまり15%の濃度のエタノールが蒸発する場合、その蒸気中のエタノールはだいたい50%程度でしかないのである。この蒸気を冷やして凝縮させると、50%エタノールとなる。そしてグラフからもわかるように、液体中のエタノール濃度が下がると共に、蒸気中のエタノール濃度も下がっていく。つまりいっしょに蒸発する水の割合が増えてゆく。もちろん料理の場合、水がいっしょに蒸発してもまた足せばいいのでまったく問題ないのだが、問題は実際のなべの中で、どれくらい蒸発させれば液体中のエタノールがなくなるのかはっきりしないことである。
いろいろ検索する中で、「あっとマドラー」というおもしろ商品を使って、ブランデーのアルコールを飛ばし、その濃度をおおざっぱに測定する実験を行っている方を見つけた。このレポートを見ると、「アルコールを完全に飛ばす」というのは相当根性がいることがわかる。何と燃え尽きるまで燃やしてもなくならないのだ!けっこうびっくりです。
これらから言えることは、おそらくさっと煮たくらいではアルコール濃度はゼロにならないだろうということ。みりんや日本酒、ワインにブランデーなど、料理に使われる機会は多い。なかなか完全に飛ばしきれていない可能性が高いということは、つまり大人も子供も、なんだかんだと日常的に少量のアルコールは摂取しているのだろうということだ。
とはいえ通常料理に加える酒類というのは全体からすれば少しだけ。たとえば日本酒が10倍に薄まるとすると、その時点ですでにアルコール濃度は1.5%程度なので、そこからさらに煮込む鍋ものなどの場合は気にするほどの量ではない。和食のたれの基本レシピである醤油:みりん:酒 = 1:1:1の場合、初濃度は約10%となるので、これはある程度煮切った方がよいかも知れない。
しかし上記リンクのブランデーの実験からもわかるとおり、完全にアルコールが飛んでしまった後のお酒の残りは全然おいしくないとのことなので、料理にとってもどれだけプラスになるのかは若干疑問となる。むしろすこ~し残ってるくらいが風味がいいのかも。
だから何?ということではないけど、どうしてもアルコールを摂りたくない方は、上記リンクの実験のように相当しっかりと煮詰めるか、もしくは最初からお酒の類は使うなということになりますね。
まあフランベのように燃やしちゃえばそれなりになくなるような気はするけれど、鍋で水分といっしょに煮る場合、完全になくすのは難しいだろうというのは、有機合成をやってる人なら誰でも思うことではないだろうか。
ざっくりと検索してみると、一般には、アルコール(=エタノール)の沸点(約78度)は水の(100度)より低いから、加熱すればアルコールが先に蒸発するという記述が多数派。でも中には完全には除けませんと書いてあるページもある。
実際にどれくらい煮込むとどれくらい飛ぶのかの実測数値データを探したんだけど、見つけられず。でも有機溶媒を日常的に使う合成化学者は、水とエタノールの混合物からエタノールだけを完全に留去することがそんなに簡単ではないことをよく知っている。もちろん水を飛ばすほうがより大変ではあるのだけれど。
それはさておき、これがなぜそんなに簡単ではないかというと、水とエタノールというのは任意の割合で混ざる上に、混ざった液体同士がいっしょに蒸発するからだ。たとえばみりんや日本酒の場合、水とエタノールがだいたい85:15程度。重さでも体積でもそんなに大きくは違わないので、とりあえず85 mLの水と15 mLのエタノールが混ざっているとする。これを加熱したときに、最初に蒸発する15 mLが100%エタノールで、残りは完全に水なのなら話は簡単なのだが、実際はそうはいかない。こちらのサイトからお借りしたエタノール/水 蒸気液平衡曲線(下記グラフ左)で、x軸が0.15あたりのときy軸は0.5くらいになってるのがわかるだろうか?
つまり15%の濃度のエタノールが蒸発する場合、その蒸気中のエタノールはだいたい50%程度でしかないのである。この蒸気を冷やして凝縮させると、50%エタノールとなる。そしてグラフからもわかるように、液体中のエタノール濃度が下がると共に、蒸気中のエタノール濃度も下がっていく。つまりいっしょに蒸発する水の割合が増えてゆく。もちろん料理の場合、水がいっしょに蒸発してもまた足せばいいのでまったく問題ないのだが、問題は実際のなべの中で、どれくらい蒸発させれば液体中のエタノールがなくなるのかはっきりしないことである。
いろいろ検索する中で、「あっとマドラー」というおもしろ商品を使って、ブランデーのアルコールを飛ばし、その濃度をおおざっぱに測定する実験を行っている方を見つけた。このレポートを見ると、「アルコールを完全に飛ばす」というのは相当根性がいることがわかる。何と燃え尽きるまで燃やしてもなくならないのだ!けっこうびっくりです。
これらから言えることは、おそらくさっと煮たくらいではアルコール濃度はゼロにならないだろうということ。みりんや日本酒、ワインにブランデーなど、料理に使われる機会は多い。なかなか完全に飛ばしきれていない可能性が高いということは、つまり大人も子供も、なんだかんだと日常的に少量のアルコールは摂取しているのだろうということだ。
とはいえ通常料理に加える酒類というのは全体からすれば少しだけ。たとえば日本酒が10倍に薄まるとすると、その時点ですでにアルコール濃度は1.5%程度なので、そこからさらに煮込む鍋ものなどの場合は気にするほどの量ではない。和食のたれの基本レシピである醤油:みりん:酒 = 1:1:1の場合、初濃度は約10%となるので、これはある程度煮切った方がよいかも知れない。
しかし上記リンクのブランデーの実験からもわかるとおり、完全にアルコールが飛んでしまった後のお酒の残りは全然おいしくないとのことなので、料理にとってもどれだけプラスになるのかは若干疑問となる。むしろすこ~し残ってるくらいが風味がいいのかも。
だから何?ということではないけど、どうしてもアルコールを摂りたくない方は、上記リンクの実験のように相当しっかりと煮詰めるか、もしくは最初からお酒の類は使うなということになりますね。
by a-pot
| 2011-11-23 16:49
| 食事、酒など