ウイルスと細菌と真菌は違う |
これライフサイエンス界では常識ですが、世の中一般的には決して常識ではないようなので、確認しましょう。私も専門家ではありませんし、わかりやすさ優先で。間違いなどあればご指摘いただければ幸いです。
基本のキとして、まずはタイトルのとおり、ウイルスと細菌(=バクテリア)と真菌というのはそれぞれ全くの別物です。サイズ的に小さい順に書いていますが、ウイルスというのは細胞としての形態や機能を持たず、いわゆる「生物と無生物の間」の微妙なところにいるもので、ざっくり言えば自分で自分を複製(自己増殖)できないという点で、生物ではないというのが一般的な見解です。
でもウイルスは増殖して子孫を残すのだから生物なのでは?という考え方もありますが、感染先のヒトや動物の細胞の機能を拝借して自分を複製してもらっているだけなのです。
細菌と真菌はどちらも細胞からなり、自己複製する生物です。細菌はたったひとつの細胞からなる単細胞生物で、何しろ細胞1個で完結していますから、条件が整うとものすごい速度で増殖します。悪玉菌や善玉菌などといわれるように、病原性を持つものと、逆にヒトの生存にとって不可欠なもの、それらのどちらでもない(人畜無害な)ものがあります。
真菌は我々と同様、多細胞生物です。水虫(白癬)菌やカビや酵母、きのこなどいろいろなものが真菌に含まれます。これらのうち一部が病原性を持ちます。菌とつくのでまぎらわしいですが、細菌とは別物です。
さらにまぎらわしいのは、ウイルス、細菌、真菌のどれもがヒトに感染して、感染症を引き起こすという点ですね。しかもウイルスと細菌はどちらも「風邪」のような症状を引き起こす原因となります。通常の「風邪」はウイルスによる場合が多いのですが、こじらせると細菌感染も起きてさらに悪化する場合もあるため、ほんとにややこしい。
さらにさらに、「微生物」という言葉は小さな寄生虫、真菌、細菌、ウイルス等をひっくるめて使われることが多く、これもまぎらわしさを増加させています。
一方で治療という点から見ると、感染症というのは自分ではない異物(病原体)によって引き起こされますので、その異物を排除することにより治癒できます。つまり病原体が何であれ、いい薬さえ開発できればきれいさっぱり治すことができる数少ない病気の一種なのです。
抗生物質という言葉をよく聞くと思いますが、これは細菌をやっつける薬です。したがってウイルスや真菌には効きません。通常の風邪に対してやみくもに抗生物質を処方するのは間違いと言われるのはこのためです。抗ウイルス薬や抗真菌薬もそれぞれ多くの種類が開発されて使われています。
したがって感染症に対しては、まず感染源(病原体)が何なのかを見定めて、それに応じた治療薬を選ぶのが基本になります。もちろん治療薬がない感染症もまだたくさんあります。
ワクチンは、原則として感染していない健康な状態で接種するもので、「病原体に似たようなもの」を体内に入れることで、自分自身の免疫作用により抗体というものを体内に作り出して、感染を予防します。なのでワクチン自体に抗菌作用や抗ウィルス作用があるわけではありません。
いくつかの言葉も混乱を増長させていると思います。たとえばウイルス陽性になった人を保菌者と呼んだりしますし、ウイルスを除去するのに除菌とか殺菌作用などと表記されたり。まあアルコールや次亜塩素酸ナトリウムはウイルスと細菌の大半を除去できると言われていますから、あまりいちいち目くじら立てることでもないかとは思いますが。
多少は整理されましたでしょうか?全然わかりやすくない例えですが(笑)、ウイルスと細菌と真菌の関係は、大麻と覚醒剤と麻薬の関係と似ています。どれも似たような症状を引き起こしますが、原因はそれぞれまったくの別物だということです。あれ?全然オチない・・・
(写真はまかない豚丼、本文とは関係ありません)