2006年 01月 04日
社費で教科書を買う |
アメリカの多くの学校、会社が今日(3日)から始まりました。
うちの会社も初日からいきなりトップスピードで飛ばしてます。
先日、同僚がいい本を見つけました。うちの会社は製薬会社としてはちょっとユニークなアプローチとして、boron chemistry(ホウ素関連の化学)にフォーカスした医薬品開発をしているのですが、医薬品の構成元素(普通は炭素、水素、酸素、窒素からなり、時に硫黄やフッ素、塩素、臭素、およびリンなどを含む)としては珍しいその「ホウ素」に関する化学(物性とか反応性とか)や医薬品への応用などについて詳しくまとまった専門書が昨年出版されたのです。こういう類の専門書っていうのはいつも値段がとても高くて、この本の場合、1冊$170、つまり2万円弱します。
その同僚が、「これは我々のグループにとって大変有用な本なので、会社で買うべきです。少なくとも1冊、あるいはケミスト全員に1冊づつ購入するのはいかがでしょう?」という提案を、合成化学のグループ内にメールで流しました。
するとすかさず大ボス(Sr. VP)が反応し、「それはいい本だしgood ideaだ。全員に1冊注文してくれ」ということになりました。
Chemistryのグループは現在全部で6名。従ってその同僚は6冊注文しました。会社の経費という観点からは、たとえば1冊2万円としてトータル12万円というのは、個人的にはともかく会社にとっては大した金額ではありません。毎日消費する試薬類を考えればどうってことない額ではあります。しかもこの程度の出費で各自の知識向上、ひいては生産性のアップにつながれば大変安い買い物と言えます。
でもこうして買われたこの教科書、いったい誰に帰属するのでしょうか?会社のお金で買ってるのだから、会社のものなのは当然ではありますが、同じ物を6冊です。そして現在のグループ6名がそれぞれ1冊持ちましょうということで買ったので、各自が会社にいる間は各自が保管することになります。そのうち誰かが退社することになったとき、建前上はもちろん本を持って出て行くことはできないはずですが、でも現実問題として6冊もいらないのも確かです。
そういうことを事前にあーでもこーでもと悩む前に、「それはいい!買おう!」という決断ができてしまうところが小さな会社の利点なのかも知れませんし、あるいはアメリカ的発想なのかも知れません。根底を流れるのは、「いずれにしてもみんなに買っておけばみんなにとってプラスにこそなれ、マイナスは何もないじゃん」という考え方です。Win-Winな考え方といいましょうか。会社のお金を使わせてもらうけれど、決して私利私欲のためではなく、それによって個人も会社もhappyになれるはず、というポジティブシンキングといいましょうか。
こういった経緯を見ていて、私は傍観者的におもしろいなーと思うと同時に、日本と比べると個人というものを大変重視するアメリカの「こんなこともアリ」という一面を改めて感じました。
うちの会社も初日からいきなりトップスピードで飛ばしてます。
先日、同僚がいい本を見つけました。うちの会社は製薬会社としてはちょっとユニークなアプローチとして、boron chemistry(ホウ素関連の化学)にフォーカスした医薬品開発をしているのですが、医薬品の構成元素(普通は炭素、水素、酸素、窒素からなり、時に硫黄やフッ素、塩素、臭素、およびリンなどを含む)としては珍しいその「ホウ素」に関する化学(物性とか反応性とか)や医薬品への応用などについて詳しくまとまった専門書が昨年出版されたのです。こういう類の専門書っていうのはいつも値段がとても高くて、この本の場合、1冊$170、つまり2万円弱します。
その同僚が、「これは我々のグループにとって大変有用な本なので、会社で買うべきです。少なくとも1冊、あるいはケミスト全員に1冊づつ購入するのはいかがでしょう?」という提案を、合成化学のグループ内にメールで流しました。
するとすかさず大ボス(Sr. VP)が反応し、「それはいい本だしgood ideaだ。全員に1冊注文してくれ」ということになりました。
Chemistryのグループは現在全部で6名。従ってその同僚は6冊注文しました。会社の経費という観点からは、たとえば1冊2万円としてトータル12万円というのは、個人的にはともかく会社にとっては大した金額ではありません。毎日消費する試薬類を考えればどうってことない額ではあります。しかもこの程度の出費で各自の知識向上、ひいては生産性のアップにつながれば大変安い買い物と言えます。
でもこうして買われたこの教科書、いったい誰に帰属するのでしょうか?会社のお金で買ってるのだから、会社のものなのは当然ではありますが、同じ物を6冊です。そして現在のグループ6名がそれぞれ1冊持ちましょうということで買ったので、各自が会社にいる間は各自が保管することになります。そのうち誰かが退社することになったとき、建前上はもちろん本を持って出て行くことはできないはずですが、でも現実問題として6冊もいらないのも確かです。
そういうことを事前にあーでもこーでもと悩む前に、「それはいい!買おう!」という決断ができてしまうところが小さな会社の利点なのかも知れませんし、あるいはアメリカ的発想なのかも知れません。根底を流れるのは、「いずれにしてもみんなに買っておけばみんなにとってプラスにこそなれ、マイナスは何もないじゃん」という考え方です。Win-Winな考え方といいましょうか。会社のお金を使わせてもらうけれど、決して私利私欲のためではなく、それによって個人も会社もhappyになれるはず、というポジティブシンキングといいましょうか。
こういった経緯を見ていて、私は傍観者的におもしろいなーと思うと同時に、日本と比べると個人というものを大変重視するアメリカの「こんなこともアリ」という一面を改めて感じました。
by a-pot
| 2006-01-04 15:52
| 医薬、バイオ関連